タクシーでバスターミナルを離れたのは良いものの、それからどうするか考え込んでしまいました。
ケルマンの次はイスファハンに行こうと思っていたのですが、バスターミナルが使えない以上、バスではいけません。まさかタクシーでイスファハンまでいくなど、お金がいくらかかるかわかりませんし、そんな奇特なタクシードライバーなどいないでしょう。
となると、残るは飛行機か・・・
とりあえず、フライトスケジュールを調べようと思い、ケルマン市内の旅行社を探しましたが、初めて来た町で、そんなに都合よく見つかるものではありません。なれないペルシャ語を使ってがんばりましたが、無理でした。
そもそも、ペルシャ語で「旅行社」はなんていうのでしょうか?全く見当もつきません。
しょうがない・・・ダメで元々、空港に行ってみるか。
そしてケルマン空港に近づくと、一機のツポレフが泊まってました。
しめた!!と思いました。
でも、この飛行機、どこ行きなんだろう???
そして、空港に入ってみると誰もいない・・・
いままで海外旅行をたくさんしてきましたが、こんな空港は初めてです。
昼間、誰もいない空港は本当に不気味でした。
空港カウンターのテーブルを見ると、キャンセル待ちのリストがおいてありました。既に10人くらいの名前がすでに記入されています。
そして、飛行機の行き先を見ると、テヘランのペルシャ文字が!!
「この文字はテヘランだよな。そうであってくれ1!」
そう願っていると、空港職員らしき人が近づいてきました。
私:次のフライトはテヘラン行きですか?
職員:そうだよ
よし。とりあえず、目的地はOK。
ここにきてテヘランに戻るのはシャクだけど、何せ状況が状況です。
この町から脱出できないよりは全然良いと思いました。
航空会社はイラン航空じゃないみたいだな・・・、そう思って「イラン航空ですか?」とその職員に聞くと、「マハン&%$#」(よく聞き取れない)。
地球の歩き方で調べると、どうも「マーハーン航空」というのがあるらしく、たぶんそれなんでしょう。でも、この航空会社、大丈夫なのかな???結局いろいろあって、私はキャンセル待ちリストの12番目に名前を連ねることになりました。でも、12人もキャンセルなんて出るんでしょうか。
しかし、ここでもまた幸運な出会いが私を待っていました。
テヘラン行きのフライトまで、約1時間あったのですが、手持ち無沙汰でぼーっとしていると、一人の中年男性が英語で話しかけてきました。
男:どこから来たの?
私:日本だよ
というありきたりの会話をした後、「これ食べる??」とクッキーのようなものを差し出してきました。
「えっ・・・これって、大丈夫か?睡眠薬強盗だったりして?でも空港の中だし・・」色んな心の中の葛藤があったあと、「いや、今、おなかいっぱいだから」とあたりさわりのない返事をして丁寧にお断りしました。
どうやら彼は正規のチケットを持っているらしく、私がキャンセル待ちリストの12番目だと聞くと、「そりゃ、ダメだな」と首を振りました。
「しょうがない。今日はケルマンに泊まるか・・・」
そう思った瞬間、彼は「じゃあ、私が空港のマネージャーに話をしてあげよう」と言い、おもむろに空港職員の方へ歩き出しました。
「へっ???(このおじさん、何者???」
そして、あのえらそうな空港職員の態度が彼の前だと一変!!物腰柔らかく変身してしまいました。
そして、二人であれこれ話したのち、彼は私に向かって小声で「君は明日、日本に帰ることになっている。いいね。キャンセル待ちの受付が始まったら、職員にそう言うんだ。」
これで私の彼に対する警戒心は綺麗さっぱり解消してしまいました。
そして、フライトの時間が近づき、出発30分前くらいになったとき、キャンセル待ちの結果発表が始まりました。
キャンセル待ちの発表というと、日本では社員が順番にアナウンスしていきますが、イランではそうではありません。
カウンターにみんなで「俺じゃないのか?俺はいつなんだ?」とまるでインドの様相です。
先ほど助けてくれたおじさんはすでに手続きを終え、出発ロビーに入ってしまっています。今現在、助けてくれる人は誰もいません。
僕は意を決して、「明日、日本に帰らなければならないんだ」と大声で叫びました。
職員はそれを聞いて「明日のいつだ?」と聞くので、「明日の朝」と答えると、「しょうがねーな」という顔をして、12番目から一気に順番がジャンプアップ!!程なく、チケットを発行してくれました。
割り込みした形になってしまってすみません、イランの皆さん。
でも、このときは仕方なかったのよ・・・
セキュリティーゲートをくぐると、さっきのおじさんが待っていて、「やあ、上手く言ったね」と喜んでくれました。そして、出発前のロビーでノンアルコールビールで乾杯!!(もちろん、おじさんのおごり)
そして、何とかケルマンを脱出。1時間ほどでテヘランに到着しました。
いやー、良かった良かった。一時はどうなることかと思った。
その後、ケルマンでの事の次第をそのおじさんに話すと、その3人組は彼も知っているらしく、「飛行機でケルマンを離れたのは正解だった」とのこと。ターミナルは良い人も悪い人も集まるが、ケルマン、ザヘダンは悪い人の割合が極めて多いと。対応を誤ると、特に外国人は取り返しがつかない事になると言っていました。
そして、1時間ほどでテヘランに到着。テヘラン到着後もこのおじさんは色々と世話をしてくれ、市内の高級ホテル(地球の歩き方で四つ星ホテル)まで紹介してくれました。
ホテルに入ると支配人がわざわざお出迎え。このおじさんも「やあ、久しぶり」みたいな挨拶なのです。
何者なんだ、このおじさんは??
私はその跡、イスファハンに行く予定であることを伝えると、イラン航空の場所を丁寧に教えてくれ、さらにその支配人に「彼は疲れているから、良い部屋を用意するように」と言い残し、仕事があるからと去っていきました。
別れ際に素性を尋ねると、彼は石油会社の重役さんでした。
イランで日本人を見かけるのは珍しいと思い、声をかけたとのこと。
私は彼に感謝をつたえ、名刺をいただきました。
帰国後、彼にお礼のメールを出しましたが、返事はありませんでした。ちゃんと届いていたのかな・・・
用意された部屋は、シングル料金でスイートの部屋を使わせてもらいました。
そして、その日は快適な睡眠・・・
翌朝は、豪華スイートルームでお目覚めです。しかし、スイートってすごいです。部屋も豪華だし、アメニティも豊富。写真取ってくれば良かった・・・
とりあえず、遅めの朝食をとり、名残惜しいけどチェックアウト。
もうスイートなんて二度と泊まることはないだろうな(笑)
手持ちのお金がドルしかなくなっていたので、近くの銀行に行って両替。
その後、イラン航空のオフィスに行き、イスファハン行きのチケットを購入しました。
バスにしなかった理由は、予定よりもタイムロスしていたので、移動時間の節約をしたかったからです。
テヘラン~イスファハンの航空便はかなりの便数が飛んでいて、問題なく午後一のチケットを購入できました。
そんなこんなで次の目的地はイスファハンです。